最初で最後の恋をおしえて

「泊まるだなんて、ひと言も言ってないと思いますが」

「俺は離れたくないけど」

 羽澄は紬希の前に体を屈め、持ち上げた手を自分の頬に添えた。目を閉じ、その手に頬を寄せる。

 その一部始終を目の前で見せられて、沸騰するように体が熱くなる。

「羽澄さんにとって、女性とそうなるのは抵抗ないのでしょうけど、私は」

「俺、夢に見たんだ」

「はい?」

「紬希が帰った後、うとうとしていたら、キスをした夢を見た。目が覚めて夢だと知ったら、全てが夢の気がして」

 なにが言いたいのかわからずに、羽澄を見つめる。

「紬希はどうして昨日、俺を突き飛ばさなかったの?」

 それはあなたが好きだから、らしいです。まだ自分でもあやふやな仮説を、彼には伝えられない。

 言葉にするのが憚られ、黙り込む。

「俺の過去が気になるのは、少なからず俺に好意があるからだと自惚れたくなる」

「なにを、言って。だって、恋はワクワクしてキラキラして、素敵なんですよ?」

「うん」

 彼を好きか嫌いかは置いておいて。少なくともこの気持ちは親戚の子の言っていた恋とは別物だ。それは自信を持って言える。
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