英雄騎士様は呪われています。そして、記憶喪失中らしいです。溺愛の理由?記憶がないから誰にもわかりません。
白猫の蹴り
師匠の家の本を持って邸に帰ると、いきなりミストがノクサス様に飛びかかって来た。
そして、ミストの蹴りが一発入る。
「この変態男!! ダリア様がいるのに、番を他にも作ろうとするなんてーー!!」
さっきまでは、サンドウィッチが美味しかったや、レモンパイが美味しかったとご機嫌だったのに、眉間にシワを寄せてミストの首根っこを掴んだ。
「これのどこが懐いているんだ?」
「こんなに明け透けなのは、ノクサス様にだけですよ」
ノクサス様から、喚いているミストを受けとるとアーベルさんが「おかえりなさいませ」と出迎えた。
そのアーベルさんも少し疲れている。
「アーベルさん。なにかありましたか?」
「また、来たのですよ……」
「どなたが?」
「ランドン公爵令嬢様です。ノクサス様とダリア様が正式に婚約したことを知ったのです。それで、ノクサス様に会わせて欲しい……と言われまして」
フェルさんが、陛下に伝えに行ったから、きっと陛下からお聞きになったのだろう。
怒っているランドン公爵令嬢様の姿が目に浮かぶ。
「来てもほおっておけばいい。もう、どうすることも出来ん」
ノクサス様は、気にする様子もない。
「そうなのですが……ミストが、何やらおかしいのですよ」
アーベルさんは、ミストの頭をそっと撫でた。
「だって、あの番は穢れがあった!! 変態男が移したんだ!!」
「番ではない!!」
ランドン公爵令嬢様が番と思われるのは、ちょっと嫌だ。結婚するのは、私なのに……と脳裏をかすった。
それに、移すって言っても、ノクサス様がランドン公爵令嬢様にお会いに行くのだろうか?
ここ最近は、仕事以外はずっと一緒にいるし、帰ってくると抱きついて来る勢いでくっついて来るけれど、女の人の香水の匂いなんかしたことない。
もしも、ランドン公爵令嬢様とそういう関係なら、絶対に香水の匂いがしそうなんだけど……。
「ミスト。ランドン公爵令嬢様は、ノクサス様の番じゃないわよ。ノクサス様は、浮気するような人じゃないわ」
「でも! あの穢れは、この変態男と同じです!! 僕には、わかるんです!!」
「それは本当?」
ミストは、仮面を付けているノクサス様の穢れも見えていたし、何よりも精霊獣だった。
穢れには、特に敏感だと思う。
「ミスト。落ち着いてください。ノクサス様は、ダリア様だけですよ。戦中も、誰も召さなかった人ですよ」
ランドン公爵令嬢様のことを考えていると、フェルさんが驚きの発言をした。
戦中に誰も召さなかった? 戦中でも休日はあって、その日になると娼館は稼ぎ時だ。
ノクサス様だって、大人の男性だから絶対にご利用していたはず……。
「……フェルさん。それは、噓ですよね?」
「本当です。一年ぐらい前から、全くないのです。今思えば、ダリア様のことがあったからだと思います」
ノクサス様を見ると、「余計なことをバラすな!」と、ちょっとムッとしてしまっている。
一年前までは、きっとご利用していたのだろうけれど……まさか、私と出会ってからご無沙汰だったとは。
「まさか、毎晩夜這いに来るのは、よ、欲求不満のせいですか?」
「そ、そうではない! ダリアだから、行くんだ!」
ノクサス様がそう言うと、フェルさんは呆れたように頭を抑えている。
「……今夜も鍵をかけておきます」
「くっ……今は、そんなことよりも、アリス嬢のことだ! アリス嬢も呪われているのか!?」
やけくそ交じりで言っている気もするけれど、ノクサス様の言う通りだ。
以前お会いした時には、呪われている感じではなかった。しかも、ノクサス様の穢れと一緒だというのが気になる。
同じ呪いにかかっているのかと思うと、不思議だ。
「ミスト。呪いを感じたの?」
「穢れを少しまとっていました」
「ダリア様。私は、ミストと庭にいたのですけれど、ランドン公爵令嬢様が来た途端にミストが毛を逆撫でて怒り出したのですよ。最初は、ダリア様以外の女が来たからだと思ったのですけれど……」
ミストの言うことは、無視出来ない情報だ。ましてや、精霊獣だとわかった時点で疑いはない。
「一度、ランドン公爵令嬢様にお会いしましょう。こっそりと調べた方がいいですよね」
「調べるのは俺がするから、ダリアはなにもするな。邸からは、出さないぞ」
「でも、ノクサス様では、魔法を感じ取れませんよね?」
「ノエルがいるから、問題はない」
「ミストを連れて行った方がいいかもしれませんよ。この子の穢れに敏感な感覚が役に立つかもしれません」
「なら、ミストに協力させる」
「変態男のいう事なんか聞かないぞ」
ミストは、ツンとそっぽを向いた。
「ダリアのためだぞ」
「呪われているのは、変態男だ!」
「ミスト。私からもお願い。ノクサス様の力になってくれる? お魚もいただいているでしょう?」
「ダリア様が言うなら行きます!」
「嬉しいわ。ありがとう」
ごろにゃんと、すり寄ってくると、本当に可愛い。
アーベルさんも、きっとこの可愛さにやられて、ミストを可愛がってくれるのだろうと思った。
そして、ミストの蹴りが一発入る。
「この変態男!! ダリア様がいるのに、番を他にも作ろうとするなんてーー!!」
さっきまでは、サンドウィッチが美味しかったや、レモンパイが美味しかったとご機嫌だったのに、眉間にシワを寄せてミストの首根っこを掴んだ。
「これのどこが懐いているんだ?」
「こんなに明け透けなのは、ノクサス様にだけですよ」
ノクサス様から、喚いているミストを受けとるとアーベルさんが「おかえりなさいませ」と出迎えた。
そのアーベルさんも少し疲れている。
「アーベルさん。なにかありましたか?」
「また、来たのですよ……」
「どなたが?」
「ランドン公爵令嬢様です。ノクサス様とダリア様が正式に婚約したことを知ったのです。それで、ノクサス様に会わせて欲しい……と言われまして」
フェルさんが、陛下に伝えに行ったから、きっと陛下からお聞きになったのだろう。
怒っているランドン公爵令嬢様の姿が目に浮かぶ。
「来てもほおっておけばいい。もう、どうすることも出来ん」
ノクサス様は、気にする様子もない。
「そうなのですが……ミストが、何やらおかしいのですよ」
アーベルさんは、ミストの頭をそっと撫でた。
「だって、あの番は穢れがあった!! 変態男が移したんだ!!」
「番ではない!!」
ランドン公爵令嬢様が番と思われるのは、ちょっと嫌だ。結婚するのは、私なのに……と脳裏をかすった。
それに、移すって言っても、ノクサス様がランドン公爵令嬢様にお会いに行くのだろうか?
ここ最近は、仕事以外はずっと一緒にいるし、帰ってくると抱きついて来る勢いでくっついて来るけれど、女の人の香水の匂いなんかしたことない。
もしも、ランドン公爵令嬢様とそういう関係なら、絶対に香水の匂いがしそうなんだけど……。
「ミスト。ランドン公爵令嬢様は、ノクサス様の番じゃないわよ。ノクサス様は、浮気するような人じゃないわ」
「でも! あの穢れは、この変態男と同じです!! 僕には、わかるんです!!」
「それは本当?」
ミストは、仮面を付けているノクサス様の穢れも見えていたし、何よりも精霊獣だった。
穢れには、特に敏感だと思う。
「ミスト。落ち着いてください。ノクサス様は、ダリア様だけですよ。戦中も、誰も召さなかった人ですよ」
ランドン公爵令嬢様のことを考えていると、フェルさんが驚きの発言をした。
戦中に誰も召さなかった? 戦中でも休日はあって、その日になると娼館は稼ぎ時だ。
ノクサス様だって、大人の男性だから絶対にご利用していたはず……。
「……フェルさん。それは、噓ですよね?」
「本当です。一年ぐらい前から、全くないのです。今思えば、ダリア様のことがあったからだと思います」
ノクサス様を見ると、「余計なことをバラすな!」と、ちょっとムッとしてしまっている。
一年前までは、きっとご利用していたのだろうけれど……まさか、私と出会ってからご無沙汰だったとは。
「まさか、毎晩夜這いに来るのは、よ、欲求不満のせいですか?」
「そ、そうではない! ダリアだから、行くんだ!」
ノクサス様がそう言うと、フェルさんは呆れたように頭を抑えている。
「……今夜も鍵をかけておきます」
「くっ……今は、そんなことよりも、アリス嬢のことだ! アリス嬢も呪われているのか!?」
やけくそ交じりで言っている気もするけれど、ノクサス様の言う通りだ。
以前お会いした時には、呪われている感じではなかった。しかも、ノクサス様の穢れと一緒だというのが気になる。
同じ呪いにかかっているのかと思うと、不思議だ。
「ミスト。呪いを感じたの?」
「穢れを少しまとっていました」
「ダリア様。私は、ミストと庭にいたのですけれど、ランドン公爵令嬢様が来た途端にミストが毛を逆撫でて怒り出したのですよ。最初は、ダリア様以外の女が来たからだと思ったのですけれど……」
ミストの言うことは、無視出来ない情報だ。ましてや、精霊獣だとわかった時点で疑いはない。
「一度、ランドン公爵令嬢様にお会いしましょう。こっそりと調べた方がいいですよね」
「調べるのは俺がするから、ダリアはなにもするな。邸からは、出さないぞ」
「でも、ノクサス様では、魔法を感じ取れませんよね?」
「ノエルがいるから、問題はない」
「ミストを連れて行った方がいいかもしれませんよ。この子の穢れに敏感な感覚が役に立つかもしれません」
「なら、ミストに協力させる」
「変態男のいう事なんか聞かないぞ」
ミストは、ツンとそっぽを向いた。
「ダリアのためだぞ」
「呪われているのは、変態男だ!」
「ミスト。私からもお願い。ノクサス様の力になってくれる? お魚もいただいているでしょう?」
「ダリア様が言うなら行きます!」
「嬉しいわ。ありがとう」
ごろにゃんと、すり寄ってくると、本当に可愛い。
アーベルさんも、きっとこの可愛さにやられて、ミストを可愛がってくれるのだろうと思った。