最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
***



車の後部座席、運転席を背にして俺と頼子さんが、その正面にアーサーが座った。

俺たち三人はスピーカーから流れてくる会話に耳を傾けている。自宅の玄関に設置された防犯カメラの音声を出力しているのだ。

『いつまでかかってるの!? こんな女とガキ、さっさとどっかへやっちゃえばいいのよ!』

エレノアのヒステリックな声に、アーサーが額に手を置いてうなだれた。

『ちょ、ストップ! 赤ちゃんいるんですから、手荒なことはやめてくださいよ』

咄嗟に出たダリルの言葉は日本語だった。

手荒と聞いて、頼子さんが蒼白になって口もとを押さえる。俺は運転手に「急いでくれ」と指示した。

『エレノア様、子どもに怪我をさせてしまっては大変です、落ち着いてください』

ダリルはエレノアにも伝わるよう、丁寧な英語で声をかけるが――。

『他人のガキなんてどうだっていいでしょ! 早く捨ててきて! 目障りだわ』

まったく聞かないエレノアの様子にダリルは『は!?』と舌打ちする。

『あんたって女は本っ当に……!』

日本語と英語が入り交じる。アーサーは英語しか聞き取れないが、どんなやり取りをしているかは充分理解できただろう。娘の言葉は、彼が憤慨するには充分な内容だ。

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