メルティ・ナイト
沈黙するわたしに、彼は笑いながら言う。
「俺、赤坂美六ってゆーの。赤坂だから、赤髪。わかりやすいでしょ」
「赤坂さん……。覚えやすいです、とても」
「よかったよかった」
邪気のない笑みに、こちらも頰が緩む。
見た目はとても美しくて派手な髪色だから近寄りがたかったけれど、話してみるとそんなことはなかった。
最初にこの人が話しかけてきてくれてよかった、とも素直に思う。
廊下を歩く途中、注目の的になってなにやら噂話をされていたけれど、赤坂さんといっしょにいるおかげか直接声をかけられることはなくてほっとした。
「着いたよ」
一階のいちばん右端にあるのが校長室らしい。
電話でそう教えてもらった気がするけれど、あまりはっきりと思い出せなかった。