メルティ・ナイト
お昼ご飯の話を軽く流されてしまったことに悔しく思いつつ、それも彼の優しさだと思い、きちんと答える。
「えへ……、実はこの学校に会いたい人がいるから、なんです」
そう。
本来の目的をうっかり忘れてしまうところだったけれど。
わたしが楼炎高校に来たのは、幼い頃に親友だったマオちゃんに会いに行くためだった。
もっとも、マオちゃんがどこのクラスなのかはわからないけれど、ぜったいに会ったら驚いてくれると思う。
その表情が思い浮かんで、頰が緩んでしまう。
「へえ、会いたい人?」
わたしの返答に、意外そうに片眉をあげた赤坂さん。
さらに首を傾げて、なにかを考えているようなそぶりを見せる。
あれ、わたしなにか変なこと言ったかな……?
少し不安に感じながら、次の言葉を待つ。
だけど、うーん、と歩きながら考え込んでいる赤坂さんに、待ちきれず声をかける。
「どうかしましたか……?」
おそるおそる聞くわたしに、彼は大してなんでもなさそうに首を振る。
「いや、すずかちゃんの会いたい人って、初恋の人とかそんな感じ?」