メルティ・ナイト
それにしても、赤坂さんの反応は尋常ではない。
なにかを知っているのは確実なんだけれど、焦らすわけにもいかない。
わたしはなにも言わず、赤坂さんの次の言葉を待つ。
数分に思えるほど静かな数秒の沈黙のあと、やっと赤髪の彼が重たい口を開いた。
「オグラマオ、って、もしかして────」
そう彼が声をあげたときだ。
ちょうど、赤坂さんと同じくらいの背丈の、美麗な男の子がわたしの背後から現れたのは。
「なに、オグラマオは俺だけど」
落ちてくる少しハスキーな、でもよく通る声に、驚いて振り向く。
緩くセットされたセンター分けの黒髪。
気だるげな目元が持つ桃花眼。
色っぽい泣きぼくろ。
両耳にふたつずつ光るシルバーのピアス。
ブレザーの下に着ている校則違反のグレーのパーカーさえも、ブランド物に見えるスタイルの良さ。
一瞬にして目を奪う端麗な容姿に息を呑んだ。