メルティ・ナイト



それにしても、赤坂さんの反応は尋常ではない。

なにかを知っているのは確実なんだけれど、焦らすわけにもいかない。



わたしはなにも言わず、赤坂さんの次の言葉を待つ。

数分に思えるほど静かな数秒の沈黙のあと、やっと赤髪の彼が重たい口を開いた。



「オグラマオ、って、もしかして────」




そう彼が声をあげたときだ。

ちょうど、赤坂さんと同じくらいの背丈の、美麗な男の子がわたしの背後から現れたのは。





「なに、オグラマオは俺だけど」



落ちてくる少しハスキーな、でもよく通る声に、驚いて振り向く。


緩くセットされたセンター分けの黒髪。

気だるげな目元が持つ桃花眼。

色っぽい泣きぼくろ。

両耳にふたつずつ光るシルバーのピアス。

ブレザーの下に着ている校則違反のグレーのパーカーさえも、ブランド物に見えるスタイルの良さ。


一瞬にして目を奪う端麗な容姿に息を呑んだ。






< 31 / 84 >

この作品をシェア

pagetop