メルティ・ナイト


困惑気味のわたしに、さらに猫目の彼は言う。


「すずかちゃんって呼びにくいから、すーちゃんって呼んでいい?」

「えっ、ぜひ……!」


可愛いあだ名だと目を輝かせると、彼は本物の猫のような瞳を細めて微笑んだ。


「やった。じゃあ、俺のことも楓って呼んで」

「えっと、じゃあ、楓くん……?」


「んー、“くん”はいらないけど、まあそれでいっか」



にこっと笑いかけてくれる楓くんの、人懐っこい言動に心が温まる。

心理的な距離が縮まったようで幸せな気分になる。



お友だちができるか不安だったから、そんな気持ちを吹っ飛ばしてくれる楓くんの距離感の近さが、いまや助かっていた。





< 63 / 84 >

この作品をシェア

pagetop