メルティ・ナイト
途端、楓くんがしまった、という顔をした。
穂積くんも知らないふりを決め込んで、明後日の方向を向いている。
茉央くんは……、言うまでもなく眠そうなだけでなにも変わらない。
ひとりマイペースだなあ、と呆れていると、赤坂さんは観念したように言った。
「いやあ、あのさ、すずかちゃん。だいぶ刺激強いと思うけど、……いまから言うことに驚かないでね」
「刺激が強い……?」
どういうことだろう、ときょとんとする。
なにを言われるのかまったく見当がつかず、とりあえず、ということでうなずく。
そんなに言いにくいことなのかな……?
聞いちゃいけないことを聞いてしまったのかも……。
後悔しつつある感情を見て見ぬ振りをして、赤坂さんを見つめる。
「実は俺ら……」
やっとのことで重たい口を開いた赤坂さんを注視した、そのときだった。
「おーい、さっさと席座れー」
ガラッと教室の扉を開けて入ってきたのは若い男の先生。
慣れた動作で教卓の前に立つと、わたしを見て、少し間を開けてから声を上げた。
「おー相坂だっけ。転入早々、担任の俺が授業することになるけど、まあよろしくな」