メルティ・ナイト
あ、挨拶が軽い……っ!
いままで校長先生がすべての手続きを進めていてくれていたから、担任の先生のことはぜんぜん知らなかった。
あっけにとられるわたしに、少し教室の空気が和んだのを感じる。
「……あのひとはうちの担任の松山。先生らしくない先生ってことだけ言っとくね」
困っているわたしに、前の席の楓くんが助け舟を出してくれる。
ニカッと笑う松山先生は、急な女子の転入生だというのにも関わらず、平等な扱いをしてくれているように思えた。
ここに来て、つくづくロン高のいいところしか見えてこない。
悪い噂が絶えないということのほうが信じられないもの。
……前の学校よりも、うんと息がしやすい。
それは、……またちがった理由があるのかもしれないけれど。
ふうっと息をついて、心を落ち着かせる。
そして、先生に負けない大きな声を出した。
「こちらこそ、よろしくお願いします……っ!」