身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 だけどあるとき、〝パパ〟という存在について、子ども番組を見て知り得た子どもたちが私に聞いてきたのだ。

 まだ難しい話をできる年でもないと思い、そのときは焦って「いるよ」と答えていた。

 簡単にいないと言って、子どもたちを傷つけたくない。

 その気持ちだけだったけれど、そのときたまたまついていたテレビに出ていた医療系ドラマの若手俳優を指さして『パパ、こんな人』と言ったのだ。

 それがきっかけで、テレビでその人を見ると『パパだー!』と言うようになってしまった。

 今は別にそれでいいと思っていたけど、まさかこんな場面でパパというフレーズを子どもたちが出すなんて……。

「ママ、だれ?」


 詩が私の背後に隠れるようにして訊く。月も「だれー?」と重ねて訊いた。


「あの……ごめんね。ちょっと、ふたりでもう少しボール遊びしてきてくれる?」


 ふたりの腕に触れ、ひとりずつの目を見てお願いをする。

 月は少し「えー」と不満そうな声を出したけど、詩が「わかったー」と場の空気を読んだように「つき、ボールやろう」と、再びさっき遊んでいた場所まで走っていく。

 すぐに「まってー」と月も走っていった。

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