身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 もちろんきょんちゃんにも、漣さんが来てくれた一件を報告した。

 当時の私の早とちりと確認不足が招いた結果だと聞かされたきょんちゃんは、物凄く深いため息をついていた。

 ひとりで抱え込んで突っ走るところ、昔からあるよねって言われてしまった。

 でも何より、この話を聞いて自分のことのように喜んでくれた。

 こっちに戻ってきた当時、私の話を聞いていたきょんちゃんはしばらく怒っていた。


『婚約者がいるのに、菜々恵のこと抱いたってことでしょ? 許せないんだけど』

 その言葉はすごくよく印象に残っている。

 このときも自分の身に起こったことのように怒っていた。

 そんなきょんちゃんだから、すべて誤解だったと知ると漣さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになったようで、『会う機会があったら謝らないと』なんて律義なことを言っていた。

 こんな風に私の身になって自分の感情を揺らしてくれるきょんちゃんは、私にとって生涯の友人に違いない。

 私もこの先もずっと、きょんちゃんにいつでも全力で寄り添える友人でいたいと思う。

 大人になった今、こんな風に思える友人がいる自分は幸せだなと心から思えていた。

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