身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「ここで何度か見かけたことがあったから、ついお節介を焼いた」
「え……?」
「ひとりで絵を描きに来ているだろ?」
「え、あの……私のこと?」
「自分のところのスタッフくらい把握している」
そう言われて、水瀬先生が私を知っていて声をかけてくれたことを知る。同時に新たな驚きに襲われて、「あ……」と変な反応を見せていた。
「そ、そうだったんですか」
病院で働いていても、直に先生の手伝いをする仕事なんてできない私は、水瀬先生に知られているなんて思いもしなかった。驚きが驚きを呼ぶ。
「こうして描かれたものが、入院患者のベッドに飾られているんだな」
「え、そんなことも知って……」
「君にもらったと話してくれる患者ばかりだから」
そっか、患者さんから聞いて、それで私のことを……。
「じゃあ、俺はこれで」
「あっ」
驚くばかりでまともな会話もすることができないまま、水瀬先生がその場を立ち去りかける。
軽やかな一歩を踏み出したところに、「あのっ」と声をかけて引き留めた。
「ありがとうございました!」
なんとか言うことができたお礼に、水瀬先生は一度振り返りひらりと片手を上げて返事をする。
そのままあっという間にボート池の向こうへと消えていった。