身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 ディープグリーン色のスクラブ白衣が目に飛び込み、同時に見えた端正な顔に階段を上がっていた足が止まる。

 バッタリ会ったのは水瀬先生。

 立ち止まった私の上から、水瀬先生は足早に階段を下りてくる。

 週末の出来事があったせいで、つい足を止めてしまっていた。

 しかし、すぐにハッとして階段を上がっていく。

 通りすがる瞬間、反射的に会釈はしたものの、声をかけたい衝動に駆られた。

 土曜日のお礼、ひと言でも言いたい……!


「あのっ……!」


 頭の中でそう思ったとほぼ同時に声が出ていた。

 私を通り過ぎていった水瀬先生は階段の下で足を止める。

 振り返って見上げられ、どきんと心臓が強い音を立てた。


「あ、ど、土曜日の朝は、ありがとうございました!」


 考えてみれば、病院内で、お互い仕事のユニフォームを身に着けた状況でこうして話をするのは初めて。

 そもそも面と向かって話したのだって、あの土曜日の朝が初めてだったのだ。緊張しないわけがない。

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