身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「いや、別にいい。そんな改まって礼を言われることじゃない」
返ってきた言葉を聞いて、声をかけたことを後悔した。
私にとってみれば改めてお礼を言いたいと思う出来事だった。
だけど、水瀬先生にとってみればわざわざ声を掛けられるような重大なことではなかったのだ。
声を掛けられて迷惑だったんだと思うと、後悔が増大していく。
「あの、でも! ひと言言いたかったので。すみません」
話しかけてごめんなさい!
そんな思いを込めて頭を下げた。
「では、失礼します」
「今晩の予定は?」
くるりと階段の上に体を向けかけたとき、肩越しに声がかかった。
え……?
耳を疑う言葉に、恐る恐る振り返る。
水瀬先生はさっきの場所から一歩も動かず、私を見上げていた。