身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
リビングに通された菜々恵は、今度は待っていた父親に深々と頭を下げられ謝られた。
菜々恵は恐縮して、同じように頭を下げていたけれど、まさかこんなに謝罪を受けるとは思ってもみなかったかもしれない。
「月くんと詩ちゃんは、何ケーキが好きかしら? いちごの載っているケーキは好き?」
キッチンから母親に問いかけられた子どもたちは、「しろいケーキすきー」とまた声を揃えて答える。
「わかったわ。白いケーキにしましょうね」
ソファに座らせた子どもたちを横に掛け見守る菜々恵は、未だ緊張した様子で姿勢を正している。
そんな中、向かいに掛ける父親が「菜々恵さんは……」と話を切り出した。
「以前はうちの病院で働いてくれていたと聞いているよ」
「あ、はい。二年少し、看護助手としてお世話になっていました」
「こちらこそ、どうもありがとう。漣とは、病院で知り合ったということか」
「あ……お仕事は、直接お手伝いさせていただく機会はなくて。なんといいますか……」
父親の質問に菜々恵が困りだしたのを察知して、「俺が声かけたんだよ」と口を挟む。
「院内ではないけど。それ以上の詳細は、結婚披露宴で聞けるんじゃないか?」
人の結婚式に招待されると、よくふたりの出会いについて紹介しているのを耳にする。
そんなことをふと思い出して言ってみると、子どもたちのケーキを手にリビングに出てきた母親が「そうよ、結婚式!」と声を弾ませた。