身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 水瀬先生が車を駐車したのは、病院を出発して十数分の南青山。

 緑に囲まれた敷地内は、入り口に『Museum』という文字が見えた気がして、美術館?と思ったけれど、向かった先は併設されているレストランだった。

 煉瓦造りの立派な洋館は壁面にアイビーが青々と生い茂り、古くからそこに佇んでいることを物語っている。

 レストランの入り口には黒服の男性が立っていて、先導する水瀬先生に上品に頭を下げた。

 こんな素敵なレストランに来るなんて予定が朝家を出る時点ではなかった私は、いつも通りの私服姿。

 今日はたまたま小花柄のロングスカートに、シンプルなブラックのトップスというコーディネートで、デニムにTシャツというよく選びがちなコーディネートではなかったのが救いだ。

 それでもスーツの水瀬先生と並ぶと浮いてしまうから落ち着かない。

 席に案内されながら食事を楽しむ客の様子を伺うと、私が心配しているほど正装な人はいなかった。

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