身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「料理はコースでお願いしているけど、何を飲む?」

「えっと……先生にお任せします。同じでいいです」

「俺は運転があるからアルコールは飲めない。同じでいいのか?」

「はい! 同じで」


 控えている黒服のスタッフにドリンクの注文をすると、席はいよいよふたりきりになる。

 正面に水瀬先生が掛けているこの光景に、鼓動が再びトクトクと高鳴り始めた。

 どこを見たらいいのかわからず、視線がテーブルの上で泳ぐ。


「突然食事に付き合ってほしいなんて言われて、困らせたか?」

「えっ、いえ! 仕事の一環だということですし」


 食事に誘われた瞬間は驚いたけれど、仕事の一環と言われて緊張が少し和らいだ。

 スタッフとコミュニケーションを取るために、水瀬先生はこうして食事に行ったりするのだろう。

 私は初めて声を掛けられたから、ただただビックリだったけど。

 看護助手にもお声がかかったりするんだ、って……。

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