身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「絵は趣味なのか」
「はい! そうですね。趣味になるのだと思います。絵はがきを作るのが好きで」
「絵はがき。それは、誰かに出すために?」
「はい。田舎の祖母になんですけど」
「へぇ、お祖母様に」
「はい。私にとっては唯一の家族なので」
話の流れとはいえ、余計なことを口走ってしまったと思った。
案の定、水瀬先生が小首を傾げる。
「あ……私、両親を大分前に亡くしていて、祖母に育ててもらったんです」
「そうだったのか」
「すみません、こんな話」
ほとんど初めて話すような相手なのに、個人的な重い内容をいきなり話してしまった。
両親がすでに他界しているなんて聞かされたら、私だったらなんと反応したらいいのか困ると思う。
「なので、祖母が私の親代わりで。あ、田舎は豆腐屋なんです!」
少しでも話題を変えていこうと家業のことを出してみると、水瀬先生は「豆腐屋?」と食いついてくれる。
「はい。お好きですか?」
「ああ、よく食べる」
「そうですか。私も、豆腐とおからで育ってきたようなものなので、体は豆腐でできていると思われます」
真面目な面持ちだった水瀬先生が急に表情を緩めて笑い、とんでもなく変なことを言ってしまったと焦る。
体が豆腐でできてるって、何言ってるの!