身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 断る間もなく、水瀬先生はエントランス前で待機しているタクシーを捕まえる。

 開いたドアから後部座席に乗せられ、となりに水瀬先生も乗り込んだ。

 私が口を開くよりも先に、水瀬先生が私の住まいに向かってくれと運転手にお願いする。

 あの一度送ってくれただけなのに、ちゃんと場所を覚えてもらっていたんだな、なんてのんきに感心していると、横から小さく息をつくのが聞こえた。

 こんなに酔っ払って迷惑をかけて、きっと呆れられているにちがいない。


「気分はどうだ」


 そう思ったのに、水瀬先生は気遣いの言葉をかけてくれる。きゅんと胸が震えた。


「はい、大丈夫です。あの、すみません。先生、私なんかとタクシーに乗ってしまって大丈夫なんですか?」


 来賓客や滅多に会わない関係者など、挨拶や交流などに忙しかったはずだ。

 酔っ払った私の世話などしている場合では……。

< 53 / 246 >

この作品をシェア

pagetop