身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「あっ、あの、良かったらお茶でも飲まれていきませんか?」


 酔っ払っているあまり使い物にならない思考力。

 でも、それでも何とか考えて水瀬先生に伺う。

 ついででもない相手をわざわざ送ってくれたのに、玄関先で「ありがとうございました。では、さようなら」とはできない。

 そんな失礼なこと、絶対にしたくない。


「それは、もし俺じゃない相手に送ってきてもらっても言っているセリフか?」

「え……えと、それは、送ってきてもらったら、お礼もなくというのは申し訳ないので──」


 そこまで言った私の背を押し、水瀬先生はドアの内側に入る。

 あっと驚く間にドアが閉まり、ガチャンと音を立てた。


「水瀬先生……?」

「それなら、やっぱり送り届けて正解だった。別の誰かに、その役は譲れない」


 それは、どういう意味だろう。

 水瀬先生が持ってくれていた私の荷物を静かに玄関横に置く。

 狭い玄関で靴も脱がず、黙って水瀬先生を見上げた。

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