身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「水瀬様、お待ちしておりました」

 そんな声がかけられて顔を上げると、そこはシックな黒い外装のレストランエントランスだった。

 水瀬先生が顔を覚えられているお得意様なのか、入り口のスタッフはスムーズに中へと案内をする。

 そんなときだった。


「漣さん!」


 後方から女性の声に呼びかけられ、私たちの足が止まる。

 水瀬先生と共に振り返ると、そこには見たことのない美しい女性がひとり頭を下げていた。

 ゆるふわの栗毛に色白の肌。目は大きく、ピンク色のリップが似合っている。

 清楚なパウダーピンクカラーのワンピースからは細い手足がのび、ハイブランドのハンドバッグを持つ指先はネイルアートでキラキラ光る。


「漣さんにこんなところでお会いできるなんて!」


 ドクンと鼓動が不穏な音を立てる。

『目黒製薬のご令嬢だって聞きました』

 昼間の遼くんの声が耳の奥に鮮明に蘇ってきて、無意識に呼吸を止めていた。

< 76 / 246 >

この作品をシェア

pagetop