身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 考えるよりも先に、咄嗟に声が出ていた。

 水瀬先生にじっと顔を見つめられ、テーブルの上で視線が泳ぐ。


「今日……実は、ちょっと食欲があまりなくて」

「どこか体調でも悪いのか?」


 向かいから心配そうな声が聞こえて、目を合わせられないまま小さく頷く。


「そうだったのか。それなら、何か食べられるものを適当に頼もう。何が食べられる?」

「大丈夫です。先生にお任せします」


 体調が思わしくないということにしておけば、多少口数が少なく表情が暗くてもそれを言い訳にできる。

 咄嗟に出た言葉だったけど、今となってはちょうどよかったと思っていた。

 水瀬先生は仕事関係の知り合いだとさっき言っていた。

 でも、あの女性は水瀬先生のことを〝漣さん〟と下の名前で呼んでいた。

 ただの仕事関係の知り合いが、下の名前で親しそうに呼ぶだろうか。

 それに、この間は楽しかったと、女性は確かにそう言っていた。

 やっぱり、あの女性は水瀬先生のお見合い相手、婚約予定の人なのだろう。

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