身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 看護助手として働くスタッフが、大病院を継承するドクターと結ばれるなんて現実的に有り得ないこと。

 雲の上の人だと感じていた私が、やっぱりまともだったのだ。

 水瀬先生に好きだと言われて舞い上がって、彼女にでもなったつもりだった。

 水瀬先生はあんな可愛らしい婚約者がいるのに、どうして私に好きだなんて言ったの?

 私は、水瀬先生の遊び相手……?

 黒い感情が渦巻き始めていく。


「食べられるか」


 いつの間にか目の前には料理が数品並んでいて、水瀬先生が私に取り分けたプレートを差し出してくれていた。


「あっ、すみません。ありがとうございます」

「食べられなかったら、無理しなくていい」


 口数も少ない今日の私に、水瀬先生は気遣いの言葉をかけてくれる。

 体調が悪いとはじめに伝えておいてよかった。

 そのおかげであまり喋らなくて済み、多少浮かない顔も体調が万全ではないからと思ってもらえるはず。

 こんなの本当はいけない嘘だけど、この黒く醜い感情を知られるくらいならきっと許される。

 水瀬先生、ごめんなさい。心の中でそう謝っていた。

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