身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
食事を終え、自宅アパート前に車が到着したのは二十一時前。
楽しいはずだった食事の席は、自分の複雑な気持ちをひた隠しながら、水瀬先生が出してくれる他愛ない話題に相槌を打ってやり過ごした。
そして、極めつけはレストルームで鉢合わせた婚約者からの宣言。もしかしたら違うかもしれないというわずかな望みも、彼女の言葉で〇になった。
こんな気持ちでなければ、一緒に過ごしたこの数時間はきっとあっという間に時間が経って、もうお別れの時間?なんて思ったに違いない。
だけど、時間の経過がやたら遅く感じた。
それはきっと、水瀬先生にどんな態度を取ったらいいのか困っていたからだ。
ハザードランプを点灯させ、水瀬先生は車を降りていく。
すぐに助手席のドアが開き、「ありがとうございます」と降車した。
「今日は、体調が思わしくないのに、連れ回した悪かった」
「いえ。こちらこそ、すみませんでした。お気を使わせてしまい」
「いや、そんなことは気にしなくていい。夏バテといっても、油断しないでよく休むんだ。何かあればすぐに知らせてほしい」