身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 なんで、そんなこと言ってくれるのだろう。

 私は水瀬先生に心配なんてしてもらう立場じゃないのに。


「ありがとう、ございます」


 顔を見上げるのも一瞬。頭を下げて誤魔化す。


「今日は、会えて嬉しかった」


 本当なら物凄く嬉しい言葉。

 でも今は、疑問しか生まれない。

 どうしてそんなことを言うんですか……?

 そう思いながらも「私もです」と答える。ぐっと胸が詰まって息が苦しい。


「今度は、体調の良いときに。また約束できるか?」

「えっ……」


 さっきからずっと考えていた。

 水瀬先生には、水瀬先生に相応しい婚約者がいる。

 それなのに、こんな風に私と会っていてはいけない。

 水瀬先生にとっては、この逢瀬は正式に結婚するまでの遊びかもしれない。

 だけど、それはさっきの女性に対しても失礼になる。


 今日で、こうして会うのは最後に……。

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