モナムール
「……廻くん」
「ん?どうしました?」
部屋を出て行こうとする背中に声をかけると、不思議そうに振り向いた。
そのままこちらに歩いてきた廻くんの手をぎゅっと握る。
「……ごはんいらないから、もうちょっと一緒にいてほしい」
恥ずかしくて下を向いたまま告げた言葉に、廻くんは息を呑んだような気がした。
そして。
「……またそうやって俺のこと煽る。もしかして朝から誘ってます?」
「ちがっ……そうじゃなくて」
ふわり。ベッドの上に舞い戻ってきた廻くんに抱きしめられて、どうしようもない安心感と幸せを感じた。
「そうじゃなかったら、俺の反応見て遊んでます?」
首を横に振ると、私の肩口で息を吐く音が聞こえて。
肩がじんわりと温かくなるのを感じる。
「……廻くんに、言いたいことがあって」
「言いたいこと?」
不思議そうに身体を離した廻くんに頷くと、一度深呼吸をした。
「廻くん。……好き、です」
もう伝えずに後悔はしたくなかった。
口からこぼれ落ちるように音に変わったそれは廻くんの耳には確かに届いているはずなのに、廻くんの声が聞こえなくてそっと顔を上げた。
目を見開いて私を凝視する姿が可愛くて、少し笑ってしまう。
「まんまと口説かれて落ちちゃった残念な女って思うかもしれないけど。
……弱ってるところにつけ込んだ責任、ちゃんと取ってよね」
私からそっとキスをする。
きっと私の顔は、今自分でも見たことがないくらいに真っ赤に染まっていることだろう。
沸騰してるんじゃないかと思うくらいに全身が熱い。
でも、それと同じくらい、廻くんの顔も真っ赤に染まっていた。