こいろり!



居間のテーブルの真ん中に、ぐつぐつと鍋が煮え立つ。その鍋を母ちゃん、兄貴、璃香子、俺と華花の5人で取り囲む。



「コタツでお鍋って憧れだったの!嬉しいわぁ!」


華花が目をキラキラと輝かせて声を弾ませた。



「華ちゃん、狭くてごめんね~。泰良、ほらもっとそっちつめなさい!」

「あぁん?」


母ちゃんが俺を押し退けるその隣では、華花と璃香子が楽しそうに話をしている。



「ね、皆で食べると美味しいね!」

「うん!」

「華ちゃんが手伝ってくれたから、助かっちゃった」

「そんなことないわ!お鍋に入れることしかできなかったし……でも、お鍋の準備って楽しいのね!」


「本当にもう。海老まで持ってきてくれてありがとね~。華ちゃんがお嫁にきてくれたら、もっと賑やかになるわねぇ」

「あぢっ、」


母ちゃんの言葉に、鍋のレンゲを手元に落とした。


このババアなんてこと言うんだよ?

母ちゃんをギッと睨み付ければ「別にあんたのとは言ってないでしょう?」なんて、馬鹿にするように笑いやがる。



「いやー、でも泰良が華ちゃんに手ぇ出したら捕まるだろ?」

「大丈夫じゃない?ほら、泰良くんだって、まだ中学生だし」


兄貴と璃香子までが会話を続けていく。

はぁあ?違うだろ?そこじゃねーだろ?
ちょっとだけ火照る頬を手で隠して、立ち上がろうとした時──、



「ふふっ、そうね。いつかお嫁さんになりたいわ!」


ふにゃっと、華花が笑うから。一気に俺と華花に視線が向けられた。


< 102 / 178 >

この作品をシェア

pagetop