こいろり!
居間のテーブルの真ん中に、ぐつぐつと鍋が煮え立つ。その鍋を母ちゃん、兄貴、璃香子、俺と華花の5人で取り囲む。
「コタツでお鍋って憧れだったの!嬉しいわぁ!」
華花が目をキラキラと輝かせて声を弾ませた。
「華ちゃん、狭くてごめんね~。泰良、ほらもっとそっちつめなさい!」
「あぁん?」
母ちゃんが俺を押し退けるその隣では、華花と璃香子が楽しそうに話をしている。
「ね、皆で食べると美味しいね!」
「うん!」
「華ちゃんが手伝ってくれたから、助かっちゃった」
「そんなことないわ!お鍋に入れることしかできなかったし……でも、お鍋の準備って楽しいのね!」
「本当にもう。海老まで持ってきてくれてありがとね~。華ちゃんがお嫁にきてくれたら、もっと賑やかになるわねぇ」
「あぢっ、」
母ちゃんの言葉に、鍋のレンゲを手元に落とした。
このババアなんてこと言うんだよ?
母ちゃんをギッと睨み付ければ「別にあんたのとは言ってないでしょう?」なんて、馬鹿にするように笑いやがる。
「いやー、でも泰良が華ちゃんに手ぇ出したら捕まるだろ?」
「大丈夫じゃない?ほら、泰良くんだって、まだ中学生だし」
兄貴と璃香子までが会話を続けていく。
はぁあ?違うだろ?そこじゃねーだろ?
ちょっとだけ火照る頬を手で隠して、立ち上がろうとした時──、
「ふふっ、そうね。いつかお嫁さんになりたいわ!」
ふにゃっと、華花が笑うから。一気に俺と華花に視線が向けられた。