こいろり!



「まぁ、ここが泰良の部屋なのね!素敵だわ!!」

「あぁ?どこが素敵なんだよ」

「だって、毎日ここで泰良が過ごしているのでしょう?このベッドの上の脱いだままのパジャマとか、床に落ちてる服とか本とか、飲みかけのジュースとか、読みかけの漫画とか雑誌とか、やりかけのゲーム!あぁ、やりたいわ!」

「いや、普通に散らかってるだけだろ?」


華花が両手を合わせて目をキラキラと部屋の中を見渡すから、コイツを部屋に入れたのは間違いだった、と後悔した。



「周は今日どうしたんだよ?」

「今日は用事でお出掛けなのよ。スマホちゃんと持ってきてるし終わったらここに来ると思うわ!」


俺がベッドに腰を下ろせば、華花も隣にちょこんと座る。



「てか、お前さー。母ちゃんに余計なこと言うなよ」

「そうだわ!泰良もう怒ってない?」

「いや、最初から怒ってはねーよ。ちょ、……ちょっと驚いただけで」


そうだ。たかが小学生にキスされただけで、俺は何うろたえてんだよ。

唇が柔らかかっただけで、気持ちなんてねーんだし。

真横にいる華花に視線を落とせば、にこにこ笑ってやがるからパッと顔を反らした。

< 56 / 178 >

この作品をシェア

pagetop