どうにもこうにも~恋人編~
 シーツを取り換えたばかりでひんやりとした冷たいベッドの上にひとりでいると、黒いモヤモヤのことばかり考えてしまってどうしようもない。

簡単に不安になってしまう未熟な心。

大好きな人と結ばれたのに、いつの間にか目頭が熱くなっていく。

 彼は割とすぐに寝室に戻ってきてベッドに身体を滑り込ませた。背を向けて身体を横たえていた私を後ろから抱き締めてくれる。彼の身体は浴びたばかりのシャワーの熱でほかほかとしている。なんだかたまらなくなってきて、つーっと一筋の涙が流れた。

「どうしました?」

「やっぱり慣れてるなあって。西島さんは初めてじゃないんですもんね。篠原さんともこういうことをしてたんだよなぁと思ったら、またモヤモヤしてしまいました」

「そんな野暮なこと考えないでくださいよ」

「頭では分かってるんですけどね。西島さんの過去とか全部ひっくるめて愛したいのに…。私が子どもなだけなんです」

「慧」

 突然下の名前で呼ばれてドキッとした。

「こっち向いてごらん」

 私はもぞもぞと身体を動かして彼に向き直った。彼はベッドサイドテーブルに置いてあったリモコンで電気をつけた。

「な、なんで電気…」

 明るい部屋で泣き顔を見られるのは気まずい。

「俺を見て」

 私を見つめる彼の瞳を恐る恐る見つめ返す。

ごまかしなんてない力強く真剣な瞳。
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