どうにもこうにも~恋人編~
「信じてほしい。俺が今特別に思っているのは慧、君だけだよ」

「『私』じゃない西島さん、初めてです…」

「ちゃんと素の自分で君と向き合いたいんだ」

 真摯で誠実な彼の一言一言が私の胸に突き刺さる。

「下の名前で呼ばれるのも、照れますね」

「呼ぶ方も照れるんだよ」と言って一瞬だけ目を逸らした。

「啓之、さん、のこと信じてます。ずっと、信じてます」

 ああ、やっぱり恥ずかしい。

「君はいつもかわいいな」

 彼はぎゅーっと強く私を抱き締めた。

「ありがとう」

 私は彼の優しく頼もしい腕に抱かれて眠りに落ちた。
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