どうにもこうにも~恋人編~
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彼女には口が裂けても絶対に言えないが、実はマンションに帰る途中で偶然麗香に会った。ぼんやりと街頭に照らされるだけではっきりと顔は見えなかったが、前から近づいてくるハイヒールの音でそれが誰だか分かってしまった。
「また来ようかと思っていたのに、手間が省けたわね」
「今は恋人がいるんだ。ここには来ないでくれ」
「その恋人に会ったわ」
「え?」
「かわいい子じゃない。あなたのことが大好きなのね」
「ああ、まあ」
「照れないでよ。妬けちゃうわ。あなたと結婚してれば良かったって、今思っても遅いわね。あなたを裏切った罰ね」
「旦那とはうまくいっていないのか?」
「実は離婚したの。今はシングルマザーよ。あなたを選んでいれば、こうはならなかったかもね」
「そうだったのか…」
「はい、これ」
彼女は俺の手を取って手のひらの上に何かを渡した。
「鍵?」
「あなたの部屋の合鍵よ」
「ずっと持っていたのか」
「どこかであなたを繋ぎとめておきたかったんだと思う。別れたあとも唯一持っていたあなたの私物よ。あ、別れてから一度もあなたの部屋には入ってないから安心してね。不法侵入になっちゃうもの」
彼女は笑ってぎゅっとその鍵を握らせた。
彼女には口が裂けても絶対に言えないが、実はマンションに帰る途中で偶然麗香に会った。ぼんやりと街頭に照らされるだけではっきりと顔は見えなかったが、前から近づいてくるハイヒールの音でそれが誰だか分かってしまった。
「また来ようかと思っていたのに、手間が省けたわね」
「今は恋人がいるんだ。ここには来ないでくれ」
「その恋人に会ったわ」
「え?」
「かわいい子じゃない。あなたのことが大好きなのね」
「ああ、まあ」
「照れないでよ。妬けちゃうわ。あなたと結婚してれば良かったって、今思っても遅いわね。あなたを裏切った罰ね」
「旦那とはうまくいっていないのか?」
「実は離婚したの。今はシングルマザーよ。あなたを選んでいれば、こうはならなかったかもね」
「そうだったのか…」
「はい、これ」
彼女は俺の手を取って手のひらの上に何かを渡した。
「鍵?」
「あなたの部屋の合鍵よ」
「ずっと持っていたのか」
「どこかであなたを繋ぎとめておきたかったんだと思う。別れたあとも唯一持っていたあなたの私物よ。あ、別れてから一度もあなたの部屋には入ってないから安心してね。不法侵入になっちゃうもの」
彼女は笑ってぎゅっとその鍵を握らせた。