a piece of cake〜君に恋をするのは何より簡単なこと〜
* * * *
「貴弘のことって……一体何を謝るって言うんですか?」
「何って、彼が私に告白してくれたんです。彼女とは別れたから付き合おうって。こんな結果になっちゃってごめんなさい」
「お生憎様。別れを切り出したのは私の方ですから」
「でも……好きだったんでしょう? 苦渋の決断ですよねぇ」
「……どういうこと?」
「私ね、あの日にあなたからメッセージが届いていることに気付いていたんです。でも彼に気付かせないようにスマホを隠しちゃった。あなたに私と彼の関係が早くバレて欲しかったから」
那津は背筋が凍るのを感じた。
「やっぱり今までの匂わせって、わざとなの?」
「あぁ、SNSの写真ですよね? もちろんじゃないですか。それに……気付いてました? わざと彼のシャンプーを使ったり、彼のスーツに私の香水を付けたこと」
「あなた……私に何か恨みでもあるの?」
その言葉に女の顔色が変わった。
「……じゃなきゃやりませんよ、こんなこと。職場では同じ仕事をしているから比べられるし、同僚ウケもいい。貴弘さんだって……あなたと付き合う前に告白したけど断られたのよ。好きな人がいるからって。だから悔しかった……あんたなんていなくなればいいと思ったわ」
「貴弘に私が浮気しているって嘘をついたのも、それが理由?」
「そうよ。あんたが男と飲みに行ってる、連絡を取り合ってる、でも貴弘さんとは会えていない」
「それは仕事で……」
「そう、仕事。でも事実だからこそ勘違いもしやすいの。何故なら二人はすれ違い始めていたし、私が近くにいたんだもの。感情を操作するなんて簡単だった。どう? 大事なものを奪われる感覚は」
「私は何も奪ってないじゃない。あなたが勝手にそう勘違いしただけでしょ!」
「うるさい! あぁそういえばあんた、証拠があるとか貴弘さんに言って脅したんでしょ? 何も知りませんみたいな顔してよくやるわよね。しかも外から部屋の中の音声が録れるとでも思ってるわけ? どんだけおめでたいの? 馬鹿みたい」
「それはどうかな」
突然の声にハッとして振り返ると、そこには息を切らして大きく肩を揺らす周吾が立っていた。
「貴弘のことって……一体何を謝るって言うんですか?」
「何って、彼が私に告白してくれたんです。彼女とは別れたから付き合おうって。こんな結果になっちゃってごめんなさい」
「お生憎様。別れを切り出したのは私の方ですから」
「でも……好きだったんでしょう? 苦渋の決断ですよねぇ」
「……どういうこと?」
「私ね、あの日にあなたからメッセージが届いていることに気付いていたんです。でも彼に気付かせないようにスマホを隠しちゃった。あなたに私と彼の関係が早くバレて欲しかったから」
那津は背筋が凍るのを感じた。
「やっぱり今までの匂わせって、わざとなの?」
「あぁ、SNSの写真ですよね? もちろんじゃないですか。それに……気付いてました? わざと彼のシャンプーを使ったり、彼のスーツに私の香水を付けたこと」
「あなた……私に何か恨みでもあるの?」
その言葉に女の顔色が変わった。
「……じゃなきゃやりませんよ、こんなこと。職場では同じ仕事をしているから比べられるし、同僚ウケもいい。貴弘さんだって……あなたと付き合う前に告白したけど断られたのよ。好きな人がいるからって。だから悔しかった……あんたなんていなくなればいいと思ったわ」
「貴弘に私が浮気しているって嘘をついたのも、それが理由?」
「そうよ。あんたが男と飲みに行ってる、連絡を取り合ってる、でも貴弘さんとは会えていない」
「それは仕事で……」
「そう、仕事。でも事実だからこそ勘違いもしやすいの。何故なら二人はすれ違い始めていたし、私が近くにいたんだもの。感情を操作するなんて簡単だった。どう? 大事なものを奪われる感覚は」
「私は何も奪ってないじゃない。あなたが勝手にそう勘違いしただけでしょ!」
「うるさい! あぁそういえばあんた、証拠があるとか貴弘さんに言って脅したんでしょ? 何も知りませんみたいな顔してよくやるわよね。しかも外から部屋の中の音声が録れるとでも思ってるわけ? どんだけおめでたいの? 馬鹿みたい」
「それはどうかな」
突然の声にハッとして振り返ると、そこには息を切らして大きく肩を揺らす周吾が立っていた。