追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 確かに、常識で考えたら、暮れから出かけるなんてあり得ない。でも、私にはそうしなければいけない事情がある。呑気に朝を待っていたら、気が変わった王子に殺されるかもしれないのだ。

「暗くて危ないのはわかってる。でも、行くの」

「ふむ。主殿にはなにか考えがおありなのだな」

「それならば、私たちに異存はございません」

 スピネとムーンはお互い顔を見合わせ頷いた。
 話が早くて助かった。出来るだけ安全に速やかに、カレリアス邸を出るためには、ここでもたもたしている時間が惜しい。
 私は、守護獣と共に自室からの脱出を試みた。静かに扉を開けると、外には誰の気配もない。さっさと去れ、と言われたのだから当然といえば当然だけど、いつも最低ふたりはいた監視人が誰もいないのは少々拍子抜けだ。

「誰の気配もないですね。もう少し先の様子も窺いますか?」

 ムーンの提案に頷いて返すと、彼は暗がりの中で静かに低空飛行をし、やがて戻ってきた。

「ここから出口までは、完全に無人です」

「無人? そう……ありがとう」
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