追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 山のように積まれた嘆願書を床に捨て、自分好みに設えた豪華な椅子に座る。耽美な家具と、きらびやかな調度品を横目に、悠然と背もたれに体を沈ませた。
 鬱憤が溜まると、物事をひとつひとつ思い出し整理するのが私の習慣である。
 人間のふりをし、人間のように怒りを制御する術は身に着けたはずだ。
 しかし時折、どうしても破壊の衝動が抑えられなくなる。
 だから頭を冷やし瞑想をする。なにより大切な目的を忘れぬために。
 
 私が「宰相」の体で過ごしてきた四十年は、あっと言う間に過ぎた。
 頬に手を当てると、深い皺が刻まれ、最近では近くの物が見えにくい。自分の死期が近づいているのを、ひしひしと感じる。
 出来ることなら、この体が朽ちるまでに目的を果たしたい。さもなくば、間抜けな男(アンセル)に憑依して、次の機会を待つことになるからだ。
 いや。次の機会はおそらく来ない。神域に達する聖女の誕生は、きっと数世紀に一度。
 これが最後の希望、最後の機会、なんとしても目的を果たす。
 「彷徨える悪魔」ネビロスの名に懸けて、な。
 目的は明確、魔王様の復活である。
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