追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 宰相が部屋を後にすると、ディオはゆっくり扉に近付いた。そして、耳を当て足音が去ったのを確認してからこちらに戻って来た。

「もう行ったようだ。よく頑張ったな……っておい!」

 ディオとふたりになった途端、安心して体の力が抜ける。
 崩れ落ちる私を、咄嗟にディオが支えてくれた。

「ごめんなさい。緊張が解けちゃって……」

「いいんだ。悪魔の前で、平静を保つのは大変だ。しかも、途中で愚か者に出会ってしまったからな。疲れが増したのだろう」

「愚か者……なかなか辛辣ですね」

 とは言うものの、アンセルに関してはこの言葉がぴったりだと思う。どんなに頑張っても誉め言葉のひとつも浮かばなかった。ディオは私をソファーに座らせ、自身も隣に腰掛ける。
 そして、まだ少し震えが残る手を握ってくれた。

「あ、そういえば、さっき怒っていましたか? 顔が怖かったのですけど」

「さっき? ああ、アンセルが無理にララの手を引こうとしたからな、頭に来た」

「へえ。ディオでもそんな風に思うのですね、ちょっと意外です」
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