追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 冷静さが服を着て歩いているようなディオが、あからさまに怒りを顔に出すなんて珍しい。でも確かに、あの横暴で我儘な様子を見れば誰だって呆れる。親族だったらなおのこと、恥ずかしいに違いない。

「あいつがララの手に触れたと思うだけで、腸が煮えくり返りそうだ。不思議だ、こんな気持ちになるんだな、恋とはとても興味深い」

「そうですか。コイが興味深いと……ん?」

 はて? コイってなに? どのコイ? 私の知っている単語の中だと、鯉とか故意とかがあるけど、話の流れからすると「恋」っぽい。
 ディオが、恋? ええっ……誰に?
 驚いて隣を向くと、涼やかに微笑むディオがいる。
 腸が煮えくり返りそうだと、物騒なことを言った人とは思えない静穏さ。もしかしたら私の聞き間違いかも? と思い直し、恋の相手を問い返すのをやめた。
 気にはなる。とても気になるけど、今はやめておこう。
 その後、侍女が食べ物を持って来てくれて一息つくと、鍵を持った衛兵が部屋にやって来た。
 宰相に言われて、私たちを家族がいる牢に案内してくれるそうだ。
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