追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 衛兵に付いて行くと、途中で黒く焦げたような跡のある場所に出た。建物は取り壊されたのか跡形もなく、今は草木が茂るだけ。たぶんここは、ディオたちが暮らしていた所。彼らが火災で死んだとされる場所だ。
 少しだけディオの様子が気になり振り返った。しかし彼は、いつもと同じく飄々として振り返った私に笑顔を向ける。過去を過去として清算しているような潔さ。そんなディオを見習いたいと思い、私も大きく深呼吸した。
 その場所を過ぎ暫く行くと、王宮の西、寂れた一角に辿り着いた。
 衛兵は堅牢な石造りの建物の扉を鍵で開け、奥へと進む。地下へと続く階段を下ると、そこには牢が並んでいた。

「こちらです。どうぞ」

 衛兵に促され見ると、牢の中には、やつれた姉ナタリアと父、そして兄がいた。三人は酷く疲れた様子で、私が来たのにも気付いていない様子だ。

「あの、私たちだけにしてもらえますか?」

「ええ、構いませんよ。外にいますので、終わったら出て来て下さい」

 意外にも衛兵は首を縦に振った。宰相は私が家族を逃がそうとしているとは、考えてもいないようだ。
 衛兵が去ってから、私とディオは家族の牢に近付いた。
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