追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 悪魔のくせに約束は守るのね。
 あまりにも長く人間に憑依し過ぎて、悪魔らしさが減退した? なら、そろそろ魔王復活も諦めればいいのに、なんてことを考えながら、アンセルの実につまらない自慢話から気を逸らした。
 拷問ともいえるアンセルとの夕食会が終わり、私はソファーに座り込んだ。
 最後の晩餐らしく、とても豪華な夕食だったのに、残念ながら味を全く覚えていない。
 全部アンセルのせいだ……と苦々しく思いつつ、最近食べた美味しい物を想像して気を紛らわす。
 すぐ思い浮かんだのは、ソラスで食べたピヨルと、グリーランドの釣りたての焼き魚だ。
 思い出すと、無性に食べたくなった。

「焼き魚が食べたいですねぇ。釣りたてを炭火で焼いて……ああ、かぶりつきたい」

 夢見るように言うと、扉付近で警戒していたディオが言った。

「俺も思い出していた。川魚、たくさん釣ったよな? 帰ったら真っ先に食おう!」

 寝るまでのひと時。グリーランドを思いながらディオと語り合った。
 水耕栽培を増やし、温泉施設を整え、大自然の中で優雅に暮らす。それは、考えただけで心躍る夢だ。その夢を叶えるために、明日悪魔を倒す。
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