追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 祭壇は丸い円柱が並ぶギリシャ風の建物で、中央まで行くと床に大きな魔法陣が刻まれていた。
 大昔、封じられたという魔王。この下に、かの魔王が封印されているのだ。

「ようこそ。聖女ララ様」

 黒く長いローブを着て、不気味に微笑む宰相は、昼間とは全く別人に見えた。普段は平静を装っていても、願いが叶うとわかれば本性が出る。宰相ネビロス、いや悪魔ネビロスは、もう自分を偽る必要がない、と確信しているのだろう。

「どうぞ、こちらへ」

 促されるまま、ゆっくり近づく。それは魔法陣の真上だ。よく見ると床にうっすらと黒い染みがある。何度洗っても取れなかったのだろうか……。ここで死を迎えた歴代の聖女たちの悲しみの痕。なにも知らないまま死んでいった彼女たちを思うと、胸が焼けるように痛んだ。

「ファルナシオンの繁栄のため……ひざまずき、祈りを捧げて下さい」

「……そうやってみんなを騙してきたんですか」

「どういうことでしょう?」

 ネビロスは怪訝な顔をした。

「……歴代の聖女さんたちは素直で優しいから、祈りを捧げろと言われればすぐに従ったのでしょうね。それが、命を落とすことになるとは思いもせずに」
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