追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「うおおおおおおおおお。私の! 私の体に傷が! 馬鹿な、そんな……そんな……」

 裂け目からシュウシュウと空気が漏れるような音がした。
 黒いゴム風船がしぼむように、ネビロスの体は小さくなり、声も細くなっていく。

「終わりだ。魔王は二度と目覚めない。そして、お前も二度とこの世に現れない」

「エ……ゼ、ル、ギ……ウスさ……」

 悪魔はディオの言葉を聞きながら、最後に魔王の名前を呼んだ。
 彼にも彼の忠義があったのかもしれない。だけどそれを憐れんだりはしない。ネビロスは無垢な人たちを犠牲にし過ぎた。聖女たちのため、憑依され自分を失った名も知らぬ人々のために、私は心からの祈りを捧げた。

「ララ。お疲れ」

「ディオもお疲れ様でした。あ、月蝕が終わりましたね」

 見上げた月は、金色の大きな丸い顔をこちらに向けている。もう次の月蝕が来ても、誰も悲しまなくて済む、そう思うと自然と頬が緩んだ。

「見ろ、下でウーノたちが呼んでいる」

「本当ですね。じゃあ、降りましょうか」

 降下すると、ウーノやガノン、サイクスたちが集まって来た。
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