追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 なんとかしてあげたい、そんな思いが込み上げた。私は母を知らない。柔らかに微笑まれたことも、暖かい手で握り返されたこともない。だから、それをしてくれたヘンルーダに母親像を重ね、悲しい顔をさせたくない、と思っていた。
「あの、ヘンルーダさん。ちょっと、動かないで下さいね」
「え? あ……ええ、わかったわ」
リュックから宝石を取り出して手に持つと、困惑した顔の彼女に近づいて、ゆっくりとその目に手を翳す。すると、ディオが首を傾げた。
「ララ? 一体なにを……」
「創ってみます。視力矯正のアイテムを」
「しりょくきょうせい? ってなんだい?」
「まあ、黙って見ていて下さい」
 私がそう言うと、ディオは静かに椅子に座って、成り行きを見守った。
 さあ、創造を始めましょう。視力矯正の一般的なアイテムと言えば「眼鏡」である。フレームは簡単に出来ると思うけど、問題はレンズだ。視力は人によって違うから、レンズもひとそれぞれ。ヘンルーダの度数に合ったレンズじゃないと意味がない。
 だから、私は、創造に思いを込める。
 どうか、ヘンルーダの目にちょうどよい眼鏡が出来ますように。
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