追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 体長三メートル近くある紫色のドラゴンが降臨すると、その場は一瞬静まり返った。マイアはポカンと口を開け、ヘンルーダは眼鏡をくいっと上げて前のめりになる。サーシャはアメちゃんを見つめたまま、微動だにしない。見つめられたアメちゃんは、不安そうな様子だ。ドラゴンだって、可愛い幼女に泣かれるのは嫌なようだ。
 しかし、それは余計な心配だった。

「おおきいとかげしゃん! かっこいい!」

 サーシャは、泣くこともなく真っ直ぐアメちゃんに走って行った。恐れを知らぬ幼女は、アメちゃんの尻尾に抱きつき、満面の笑みである。

「わーん、よかったぁー。泣かれるかと思ったー」

 アメちゃんはほっとしたように大きく息を吐いた。そして、巨体を横たえて丸くなると、サーシャやスピネ、ムーンを乗せて遊具みたいにユラユラ揺れた。きゃーと楽しい悲鳴を上げながら、サーシャはドラゴンアトラクションを満喫している。暫くは守護獣たちにお守りを任せて大丈夫だろう。そう思った私たちは、広場に座り、おしゃべりに花を咲かせた。

「ヘンルーダ様、眼鏡、よくお似合いですよ」

「ありがとう。私も気に入っているの」
< 66 / 275 >

この作品をシェア

pagetop