追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 押しても、なにも起こらない。洗濯機がうんともすんとも言わなかったら、きっとふたりはがっかりすると思う。その残念そうな顔を思い浮かべると、申し訳なさでいっぱいになった。
俯く私の隣で、ヘンルーダがボタンを押す。
 すると……。
 動かないはずの給水ポンプが勢いよく水を吸い上げ、使えないはずの洗濯機が稼働を始めたのだ。

「は? なんで? 電気ないのに?」

 呆然と呟く私とは逆に、ヘンルーダとグレイスは歓声をあげていた。凄い凄いと手を取り合って喜ぶ声を聞いて、マイアとサーシャ、守護獣たちもやって来た。

「まあ! 勝手に動いているわ! 意味がわからないけど、これが神の御業というものかしら! ね? グレイス!」

「そうに違いないわ! こんなことが出来るのは、神以外にないもの。そうですわよね、ヘンルーダ様!」

「ええ! まさに! このグリーランドに神が舞い降りたのよ」

 マイア、グレイス、ヘンルーダは順番に言うと、こちらに最上級の笑顔を向けた。
 しかし、最上級の笑顔を向けられた本人は、最上級の困り顔である。
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