嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ありがとな、リアリム。っと、どうした、浮かない顔をしているけど」

 ちょっと眉を寄せて心配そうな顔をしたウィルティム様が、顔を近づけてきた。
むむ。ちょっと距離が近い。

「えっと、そのうん、もういいの。お兄様に聞いてもらったから、大丈夫」

「俺でもよければ、話をきくよ」

 ウィルティム様は、柔らかい声をそっと、耳元で囁いてくれる。

 兄と同じ、二つ年上のウィルティム様は貴族ではないと聞くが、時々その仕草がハッとするほど美しい。
剣の腕は確かで、濃い紺色の長髪は普段は黒に見える。瞳も同じだ。

 貴族ではない、という時点で伯爵令嬢の私が結婚できる相手ではないため、普段は気持ちに蓋をしている。

が、立派な騎士をしている彼は私のドストライクなのだ。
本当は、彼のような人と一緒になれたら嬉しいな、と思っている。

 何と言っても、私はウィルティム様に命を救ってもらったと言ってもおかしくない。



 もう2年も前のことになる。

 当時、病弱な母の為に私は薬草を探して、王家の森に入り込んでしまった。

「あ、しまった。奥に入り込みすぎちゃったかも。そろそろ帰らないと」

 騎士団に所属するお兄様を訪問する、といって家を出た私なのだ。
遅くなる前に帰らないと、と思ったところで、ふと周囲に獣の気配を感じた。

 マズイ! ここは王家の森で、人の手が入っていない。
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