嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 不思議そうな顔をしながら、まっすぐに私の瞳を見つめるウィルストン王子。お願いだから、もう離れてください。あぁ、こんな近い距離で会話するなんて。イザベラ様の怒りが恐ろしい。

「ウィルストン殿下。リアリムさんを揶揄いすぎですわ」

 突然現れたウィルストン王子を諫めるように、イザベラ様が止めてくださる。

 その調子で、私のお茶会への招待も止めて欲しい。

 恐る恐るイザベラ様をみると、顔は微笑んでいるが絶対に笑っていない。

「あぁ、スコット公爵令嬢。心配には及ばないよ。先ほど熱烈な告白を受けたから、私はただお茶会に招いているだけだから、ね」

 そう言った王子は、ようやく私の顎から手を離した。

 もう、さっきから心臓がバクバクしている。

「君にも、宰相が招待状を送ったと聞いているよ。当日は、君の友人のリアリム嬢と一緒に来て欲しいな」

 王子がにっこりと微笑むと、周囲にいた令嬢達が「はうぅっ」と頬を赤く染める。

 が、私は反対に青ざめる。あの顔は全然笑っていない。私と同じ、仮面の微笑みだ。

「では、また。お茶会を楽しみにしているよ、リアリム嬢」

 茫然としている私に、今度は狙いを定めた獣のような鋭い眼をした王子が見つめてきた。

「はっ、はいぃぃ、、」

 誰か、この状況を教えて欲しい。というか、時を戻して欲しい。

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