嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
 澄み渡る空を見つめて、私はまた一つ深いため息をついた。






「ふっ、あの顔」

 俺はさっき会ったばかりのリアリム嬢が、きょとんとした顔をしていたのを思い出す。

 公爵家のお茶会を辞した俺は、王宮の執務室へ向かう馬車に乗っていた。

「殿下、顔がにやついていますよ、顔」

 同乗している側近のチャーリー・ロウが指摘するほど、どうやら表情に出ていたようだ。

「いいではないか、ようやく念願かなって招待することが出来たんだ。もう少しこの幸福感にひたっていたい。邪魔をするな。」

 ついつい文句が出てしまう。
 あの桃色の髪をふわりとさせ、水色の瞳を大きくさせてこちらを見つめていたリアリム。
 あの真っ赤なサクランボのような唇を、ペロッと舐めたかった。

「でも殿下。大丈夫でしょうか? 今度のお茶会は、婚約者候補を集めたお茶会ですよ。既に宰相の方が候補者を選定し、声掛けを済ませたと聞いていますが。追加が可能でしょうかねぇ。」

「俺の婚約者なんだ、俺が招待したい人を招待して何が悪い。宰相なんかに婚約者を決められてはたまらん。俺は自分で選びたい」

「ハァ。まあ、それはそうでしょう。ミンストン伯爵家ですね、招待状を手配しておきます」

「ああ、よろしく頼む。ついでに花も用意しておいてくれ。あぁ、彼女の髪の色のようなピンクの花がいいな。リボンは空色にしてくれ」

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