嘘つくつもりはなかったんです! お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
「ハァ、花もですか? そんな特別扱いして、相手が期待したらどうするんですか?」

「期待させたいから、花を贈るのだ。それのどこが悪い?」

「ハァ、わかりました。ピンクの花も一緒に。って、ミンストン伯爵令嬢ですか、まぁ、中立の立場の家なので問題はなさそうですが。しかし殿下、その、リアリム嬢のどこが気に入ったのですか? 確かに外見は多少、派手でしたが、本人は控えめな性格のようですよ」

「彼女の名前を呼ぶな」

「は?」

「リアリムと名前を呼んでいいのは、私だけだ」

「殿下、いろいろと突っ込みたいのですが、ひっかかるのはそこですか?」

 我ながら、既に独占欲でいっぱいなのだ。

 ようやく、俺は王子として彼女に会うことができたのだ。

「殿下、浮かれすぎですよ。全く。これだから、恋愛童貞は」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ、一人言です」

 確かに俺は浮かれていた。彼女を婚約者とするためのお茶会に招くことが出来た喜びで、いっぱいになっていた。

 まさか、この後に厄介な関係になるとは、この時は思いもしなかった。

 彼女が王子様の俺を嫌っているとは、想像もできなかったのだ。

 何故なら、俺達は既に、知り合ってから大分経っていたからだった。






「だから、ね。困ったことになったの」

 今日は騎士団に所属するディリスお兄様のところに、差し入れを持ってきている。
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