華夏の煌き
隆明は物心ついたころには、先の王妃であった母を亡くしていたので、母を味わったことはない。乳母や女官が優しく甘やかして育ててくれたと思うが、彼女たちを母のように思ったことはなかった。
「晶鈴だけだったな……」
改めて晶鈴は友であり、恋人であり、母であったのだと思う。そう思えば思うほど晶鈴が恋しくなる。
「身代わりにはできないだろう」
よく似ている朱星雷を、ついつい晶鈴の身代わりにそばに置きたいと願ったが、逆に虚しくなりそうだ。デリケートで心根の優しい隆明は、朱星雷にも嫌な思いをさせたくなかった。
「晶鈴は何も残さなかったな」
香りもまとわず、記憶に残るのは彼女の若かりし姿だけ。彼女の好きな桔梗の花を庭に植えたが、嫌いじゃないというだけだったかもしれない。
「今、私のことを少しでも想ってくれることがあるだろうか」
故郷にいるだろう晶鈴はおそらく家庭を持っているだろう。隆明は何度も彼女の故郷に行きたいと願ったが、無理な立場だった。また彼女に会ったところで何か変えられることもない。
朱星雷の登場で、久しぶりに胡晶鈴への想いを再確認してしまった。そのことを口にはもちろん出さないが、申陽菜と周茉莉2人の側室は隆明の様子がおかしいことに鋭く気づくのだった。
55 世継ぎ
申陽菜と周茉莉はめでたく懐妊したが、二人とも産んだのは女児だった。そしてまた二人の側室が隆明の後宮に入ることになった。太極府ではまた側室選びが始まる。これで二人の側室が後宮入りしても女児しか生まれないのではないかと、口には出さないが、皆、懸念している。
過去に一度だけ王子が生まれないことがあり、女王が誕生したことがある。子が全く生まれなければ、王位継承は、王の兄弟に移るが、そうでない限りできるだけ直系血族を世継ぎにするべく女王誕生となった。
今は王はまだ健在なので、後を継ぐのは長兄の隆明になる。隆明が王になり、女児しか望めなかった場合にはまた女王が誕生する。しかし王太子の身分のまま早世してしまえば、王太子は次男の博行に譲られるだろう。
「これは好機かもしれない……」
現王妃の蘭加は、息子の博行が王になれる可能性を見出す。王太子の隆明に一人でも男児が生まれていたらそう思わなかったが、こうも女児ばかりが生まれていて、まだ王太子であれば、博行の王位継承が見えなくもない。
「晶鈴だけだったな……」
改めて晶鈴は友であり、恋人であり、母であったのだと思う。そう思えば思うほど晶鈴が恋しくなる。
「身代わりにはできないだろう」
よく似ている朱星雷を、ついつい晶鈴の身代わりにそばに置きたいと願ったが、逆に虚しくなりそうだ。デリケートで心根の優しい隆明は、朱星雷にも嫌な思いをさせたくなかった。
「晶鈴は何も残さなかったな」
香りもまとわず、記憶に残るのは彼女の若かりし姿だけ。彼女の好きな桔梗の花を庭に植えたが、嫌いじゃないというだけだったかもしれない。
「今、私のことを少しでも想ってくれることがあるだろうか」
故郷にいるだろう晶鈴はおそらく家庭を持っているだろう。隆明は何度も彼女の故郷に行きたいと願ったが、無理な立場だった。また彼女に会ったところで何か変えられることもない。
朱星雷の登場で、久しぶりに胡晶鈴への想いを再確認してしまった。そのことを口にはもちろん出さないが、申陽菜と周茉莉2人の側室は隆明の様子がおかしいことに鋭く気づくのだった。
55 世継ぎ
申陽菜と周茉莉はめでたく懐妊したが、二人とも産んだのは女児だった。そしてまた二人の側室が隆明の後宮に入ることになった。太極府ではまた側室選びが始まる。これで二人の側室が後宮入りしても女児しか生まれないのではないかと、口には出さないが、皆、懸念している。
過去に一度だけ王子が生まれないことがあり、女王が誕生したことがある。子が全く生まれなければ、王位継承は、王の兄弟に移るが、そうでない限りできるだけ直系血族を世継ぎにするべく女王誕生となった。
今は王はまだ健在なので、後を継ぐのは長兄の隆明になる。隆明が王になり、女児しか望めなかった場合にはまた女王が誕生する。しかし王太子の身分のまま早世してしまえば、王太子は次男の博行に譲られるだろう。
「これは好機かもしれない……」
現王妃の蘭加は、息子の博行が王になれる可能性を見出す。王太子の隆明に一人でも男児が生まれていたらそう思わなかったが、こうも女児ばかりが生まれていて、まだ王太子であれば、博行の王位継承が見えなくもない。