華夏の煌き

「隆明に何かあれば……」

 ごくりと喉を鳴らす。隆明が王位を継げぬまま亡くなれば、博行が王太子となり、博行の息子が王太子となる。

「あまり悠長にはできぬ……」

 現王の曹孔景は近頃、胸を押さえながら咳をすることが増えた。医局からも薬湯が多く出されており、暑い日でも冷やされたものを食べすぎないようにと言われている。高齢といえば高齢であるのでここ数年で世代交代はなされるだろう。

「どうすべきか」

 自ら手を下すことも、人を使うことも相当に慎重にやらねばならない。だが蘭加の心はもう決まっている。王太子、曹隆明を亡き者にするのだ。

「ふん。博行が王になればもう少し、あたくしを尊重するでしょうよ」

 早くに亡くなった前王妃は質素で慎み深かったことが、王に気に入れらていたようで、臣下たちからも尊敬を集め慕われていた。蘭加はその質素さを貧乏くささだと馬鹿にしていた。王妃ともあればもっと華やかな装いと凝ったアクセサリーを身に着け、他国に文化のレベルの違いを見せつけることが必要だと思っている。
実際に、蘭加が王妃になってから、華夏周辺諸国から訪れる外交官たちにウケが良かった。王妃のこだわりと贅沢な装いは、華夏国が強大で文明の高さを他国に見せつけることができた。

「質素な王妃では諸国に馬鹿にされてしまうわ」

 今の隆明の正室である王太子妃、桃華も質素で地味だ。

「臣下への人気取りもいいけど、もっと外国に目を向けるべきだわ」

 蘭加は自分の考えは王妃として真っ当なもので、華夏国にとっても良いものだと信じている。つまりこの国を諸国に対し、大国として存在していることをアピールし続けるには、息子の博行が王となり、自分が王太后として支えることが必須だろう。

「隆明や桃華が即位すれば、隣の西国につけ入れられることになるわ」

 かんざしが入った箱を開け、蘭の花が細工された金のかんざしを手に取る。少し白髪が混じってきた髪に挿し鏡を見る。赤い紅を引いた顔を見るとまだまだ若さを感じる。
 王妃や側室が直接政治に関わることはできないが、息子や王には多少干渉ができる。王の孔景も外交に関して、多少、蘭加に意見を求めることがあった。

「このまま引っ込まないわよ」

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