華夏の煌き
「とにかく塩を買ったら帰りましょう」

 目当てのものをすっかり買ってから帰宅する。待ちかねていたのか、ロバの明々は「ホヒイー」と嘶いている。

「待っててね。明々。どうぞかあさま」

 手を貸して、京湖とスパイスの入った麻袋を降ろす。

「お茶を入れてるわね」

 麻袋を一抱えもって京湖は小屋に入っていった。星羅は優々を厩舎に入れ水をやる。そして一塊の岩塩を明々の飼い葉おけの隣の桶に入れてやる。
 明々は嬉しそうに目を細め、ペロリペロリを塩をなめる。

「おいしい?」

 しばらく舐めると明々は顔を上げ、星羅の頬も舐めた。

「ふふっ。もういいの? まだあるよ」

 少し舐めれば満足するようで、明々は脚を折り目を閉じた。昼寝をするようだ。

「優々もお疲れさま」

 優々も明々をみると眠気が移ったのか、座り込んだ。大きさの違う二頭は仲良く休憩をするようだ。静かに星羅は厩舎を出てため息をつく。おそらく京湖もため息をついているだろう。

 養父の彰浩と、医局長の陸慶明に今日聞いた商人の話をして、二人の考えを聞いてみようと星羅は思っていた。本当はすぐにでも探しに行きたい気持ちがあるが、思ったまま行動に移すほど、星羅は無謀ではなかった。
 
59 懺悔

 久しぶりに陸家にやってきた星羅は、まず恩師の絹枝にあいさつをする。相変わらず書籍だらけで素っ気ない部屋だ。

「老師、ご無沙汰してます」
「元気そうね」
「今日は老師ではなく、慶明おじさまにお話したいことがあるのですがもうお帰りになります?」
「ああ、あの人ならもう帰ってきてるわ。貴晶の相手をしていると思うの」
「貴晶?」
「あら、聞いてない? 春衣が生んだ息子よ。ちょっと身体が弱くてね。おまけに春衣もあまり具合が良くなくて……」

 絹枝は、心配そうに眉をひそめる。春衣はもう若くなかったので難産だった。産後の具合も良くなく、起き上がることができない。
 今まで陸家を回していたのは、ほぼ春衣だったといっても過言はなくその彼女が臥せっているので、いろいろなことが滞っている。経済的には困窮することはないが、屋敷の内部のこまごまとしたことが上手く回っていない。何人か使用人も雇ったが、春衣のような有能なものはなかなかおらず、無駄に給金を払うばかりだった。

「今日は天気がいいから、夫が貴晶を日光浴させてると思うわ」

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